
スポーツ用マウスピースはどこで作る?歯科医院と市販品の違いを解説
スポーツ用マウスピースはどこで作る?
歯科医院と市販品の違いを解説
スポーツ中のケガ、それは一瞬の出来事で大切な歯や顎を失う原因にもなりかねません。
近年子どもから大人までスポーツに親しむ人が増える中、「口元のケガをどう防ぐか?」という予防意識が高まっています。
そこで注目されているのが「スポーツ用マウスピース(マウスガード)」の活用です。
ですが、ひと口にマウスピースといっても『市販品・熱成形タイプ・歯科医院』など、様々な種類があり「どれを選べばいいかわからない」という声も少なくありません。
本コラムでは、市販品と歯科医院製の違いをわかりやすく比較しながら、あなたやご家族に最適なマウスピースの選び方をご紹介します。
1.はじめに:マウスピースの必要性とは?
スポーツの現場では、接触や転倒などによる口腔内のケガが少なくありません。
特に、ラグビー、バスケットボール、空手、ホッケー、サッカーなどでは、前歯の破折や唇・舌の裂傷といった外傷が多く報告されています。
近年では、こうしたケガを未然に防ぐために「マウスピース(マウスガード)」を使用するという予防意識が高まりつつあります。
マウスピースは、歯や歯ぐき、顎関節を守るだけでなく、衝撃を吸収することで脳へのダメージ軽減にも寄与するとされています。
また、噛みしめの安定や、パフォーマンス向上に関する報告もあり、ジュニアからプロアスリートまで幅広く使用されています。
特にお子さまの場合、歯や顎が成長途中にあるため、衝撃に弱くケガが将来の歯並びや咬み合わせに影響を及ぼすこともあります。そのため、早期からの対策としてマウスピースの装着は非常に有効です。
2.マウスピースの種類と特徴
現在、マウスピースには主に以下の3つの種類があります。
目的や使用者の年齢・競技レベルに応じて、最適なタイプを選ぶことが大切です。
(1)市販品(汎用品)
スポーツ用品店などで手軽に購入できるタイプで、既製のサイズ(S・M・Lなど)から選びます。
【特徴】
- 比較的安価で手軽
- すぐに使用可能
- 一般的なサイズのためフィット感に欠ける
- 会話や呼吸がしにくいことも
⇒ 応急的な使用には適していますが、継続使用や激しい競技には不向きです。
(2)熱成形タイプ(セミカスタム)
お湯で温めて柔らかくし、噛み締めて自分の歯型にある程度合わせるタイプ。
市販されている中でも人気のある形式です。
【特徴】
- 市販品よりも多少のフィット感が得られる
- 価格は1,000〜3,000円程度
- 加熱や成形の失敗で合わない場合もある
⇒ 軽度なスポーツや短期間の使用には選ばれることがありますが、精密性には限界があります。
(3)歯科医院製(カスタムメイド)
歯科医師が個人の歯型を精密に採取し、専用の素材で作成する本格的なマウスピースです。
【特徴】
- 高いフィット感と安定性
- 会話や呼吸もスムーズに
- 長時間の使用でも疲れにくい
- 成長期に合わせて調整可能
- 費用は5000円〜15,000円程度(一般的に自費診療扱いが多い)
⇒ 競技志向のお子さまや、安全性を重視する方に最適です。
これら3種類の違いを理解したうえで、ご自身やお子さまのスポーツスタイルに合ったマウスピースを選ぶことが大切です。
次章では、それぞれのメリット・デメリットをより具体的に比較していきます。
3.市販品マウスピースのメリットとデメリット
市販品のマウスピースは、スポーツ用品店やインターネット通販で手軽に購入できることから、多くの方が最初に選ぶ選択肢です。特に「すぐに使いたい」「とりあえず試したい」といったニーズに応える製品として広く利用されています。
●メリット
- 手軽に入手可能:スポーツショップやドラッグストアで購入でき、すぐに使える
- 価格が安価:1,000円前後で購入できるため、コストを抑えたい方に適している
- 種類が豊富:色やサイズが選べる製品も多く、見た目にこだわる方にも選択肢がある
●デメリット
- フィット感に欠ける:既製品であるため、個々の歯並びに合わず、ずれやすい
- 会話や呼吸がしづらい:合っていないと違和感があり、スポーツ中に集中しにくくなる
- 耐久性が低い:噛み締めやすく変形しやすいため、短期間での劣化も多い
- 安全性に不安:衝撃吸収力が不十分な場合があり、本来の「歯を守る」機能が発揮されないことも
●こんな方に向いています
- 軽度な競技や練習時の一時的な使用
- とりあえずマウスピースを試してみたい初心者
ただし、スポーツ強度が高くなってきた場合や長期的な使用を検討する際は、精度の高い製品への切り替えが望ましいと言えるでしょう。
4.歯科医院で作るカスタムマウスピースとは?
歯科医院で作成するカスタムメイドのマウスピースは、個々の歯並びや噛み合わせに合わせて精密に作製されるため、安全性・快適性ともに市販品とは大きく異なります。
●特徴と利点
- 精密な型取りによるフィット感
専用の型取り材料を用いてお口の中の状態を詳細に再現し、それをもとに製作するため、ズレにくく、しっかりとフィットします。
これにより、スポーツ中も安心してプレーに集中することができます。 - 素材の安全性と耐久性
医療用の安全な素材を使用し、噛みしめによる変形や破損が起こりにくいように設計されています。
長期間の使用にも適しており、しっかりと衝撃を吸収する構造になっています。 - 年齢や成長に応じた対応
成長期のお子さまの場合、歯やあごの状態は変化しやすいため、定期的な調整や再作製も視野に入れる必要があります。歯科医院では、成長に合わせたアドバイスや対応が可能です。 - 競技に応じた厚み・形状の調整
スポーツの種類や競技レベルに応じて、必要な保護力や厚みの調整が可能です。たとえば、コンタクトが多い競技ではより厚みを持たせた設計にするなど、目的に応じた最適化ができます。
●一般的な費用と作製の流れ
多くの場合【自費診療(5,000円〜15,000円程度)】となりますが、安心・安全を考慮するとコスト以上の価値があります。
作製の流れは、カウンセリング → 型取り → 製作 → 装着確認といったステップで、通常1〜2週間程度で完成します。
5.比較一覧表:市販品 vs 歯科医院製マウスピース
― 費用・安全性・フィット感・耐久性・パフォーマンス効果の観点から比較
マウスピースは「使えればよい」というものではなく、目的に合ったものを選ぶことが重要です。
以下の比較表をご覧いただき、それぞれの特徴を把握しましょう。
比較項目 | 市販品 マウスピース | 歯科医院製 マウスピース |
費用 | 約1,000円~3,000円 | 約5,000円~15,000円 (自費診療) |
安全性 | 衝撃吸収力に限界あり | 精密設計で衝撃をしっかり分散 |
フィット感 | 汎用サイズでズレやすい | 個人の歯型に合わせて作製 |
耐久性 | 噛みしめで変形・破損しやすい | 長期間の使用にも耐える構造 |
パフォーマンス | 会話・呼吸の妨げになりやすい | 呼吸がしやすく集中力を妨げない |
調整の可否 | できない(使い捨て) | 成長や状況に合わせて再調整可 |
使用目的の適合性 | 軽度な競技や短期使用向き | 競技性が高いスポーツ・長期使用向き |
このように、費用の安さ=機能の低さではありませんが、目的に応じてコストと安全性のバランスをとることが大切です。
6.お子さま・アスリート別に見る、最適な選択肢とは?
― 成長期のお子さまや競技志向の方への提案
マウスピースの選び方は「誰が、どのような目的で、どれくらいの期間使うか」によって変わってきます。
ここでは代表的なケース別に、最適な選択肢をご提案します。
●小学生・中学生など成長期のお子さまの場合
【課題】
- 歯や顎が発達段階にあるため、既製品ではフィットしにくい
- 使用中に歯列が変化し、マウスピースが合わなくなるリスクあり
【おすすめ】
→ 歯科医院でのカスタムマウスピース(定期調整あり)
お子さまの成長に合わせて定期的に調整できるカスタムマウスピースなら、無理なく安全に継続利用できます。
●部活動で本格的にスポーツに取り組む中高生
【課題】
- 対人接触や転倒の機会が多く、ケガのリスクが高まる
- 集中力やパフォーマンスへの影響も考慮が必要
【おすすめ】
→ 歯科医院製マウスピース(競技に合わせた設計)
フィット感が高く、会話や呼吸の妨げにならないマウスピースは試合中の集中力を維持しやすく、競技志向の方に最適です。
●軽度な運動や短期間の使用を希望する方
【課題】
- コストを抑えたい
- 短期的な使用、あるいは試しに使ってみたい
【おすすめ】
→ 熱成形タイプの市販マウスピース
一時的な利用には、簡易的な熱成形タイプでも対応可能。
ただし違和感やズレが生じた場合は無理に使用せず、専門家への相談をおすすめします。
●社会人・アマチュア競技者・格闘技系の方
【課題】
- 強い衝撃への対応と耐久性が求められる
- プロフェッショナルに近い環境でプレーしている
【おすすめ】
→ 歯科医院製の競技用マウスピース(厚みや材質調整可)
競技の特性に応じて設計可能なため、安心して長期的に使用できます。長く安全に競技を続けたい方に非常におすすめです。
患者様のライフスタイルや目的に応じて、最適な選択肢を見つけることが大切です。
迷われた際には、お気軽に当院へご相談ください。最適なご提案をいたします。
7.患者さまからのよくあるご質問患者さまから寄せられる、スポーツ用マウスピースに関するよくあるご質問にお答えします。
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マウスピースに保険は使えますか?
基本的には【自由診療(自費)】となります。 ただし、顎関節症の治療目的で使用するナイトガードの場合は保険適用となるケースがあります。 当院はマウスピースに力を入れているので、地域で1番の安価でありながら高品質のマウスピース作製が可能です。
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どれくらいの期間使用できますか?
使用状況や噛む力にもよりますが、目安は1〜2年です。 成長期のお子さまは歯並びやあごの形が変わるため、半年〜1年ごとの見直しをおすすめしています。
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どんな競技でマウスピースが必要ですか?
接触があるスポーツを中心に、以下の競技で特に推奨・義務化されています。格闘技(ボクシング・空手・柔道)/ ラグビー・アメリカンフットボール / バスケットボール・サッカー / ホッケー・ラクロス / 野球・ソフトボール(特に捕手) ※学校や団体によって義務化されている場合もあります。
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子どもでも作れますか?
もちろん可能です。6歳頃から作製可能で、お子さまの成長に合わせて定期的に調整・再作製を行います。
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手入れはどうすればいいですか?
使用後は水洗いのうえ乾燥させ、専用ケースで保管してください。 汚れが気になる場合は中性洗剤で軽く洗うか、専用洗浄剤をご使用ください。
8.当院でのマウスピース作製の流れと対応競技一覧
当院では、患者様の安全性と快適性を第一に考えたマウスピース作製を行っております。
マウスピース作製を希望される小児患者さまが多いため、対応にもご安心いただけます。
以下のような流れで対応しております。
●作製の流れ
- 【初回カウンセリング】
使用目的、競技、年齢、ご希望などを丁寧にヒアリングいたします。 - 【口腔内診査・歯型採取】
歯並びや噛み合わせを確認し、専用の型取り材を使って歯型を採取します。 - 【技工所での精密製作】
歯科技工士が患者様の型に基づいて、フィット感と安全性を兼ね備えたマウスピースを製作します。 - 【装着・調整】
完成したマウスピースを装着し、噛み合わせや違和感の有無をチェック。
必要に応じて微調整を行います。 - 【お渡し・使用方法のご説明】
保管方法やお手入れの仕方について丁寧にご説明します。
※完成までは通常1〜2週間程度です。お急ぎの方はご相談ください。
●対応競技(一例)
- 空手、ボクシング、柔道、総合格闘技
- アメリカンフットボール、ラグビー
- サッカー、バスケットボール、バレーボール
- 野球、ソフトボール、ラクロス
- ホッケー(アイス・フィールド)
- BMX、自転車競技
※その他、歯科医師の判断で対応可能な競技多数。
9.まとめ:大切なのは『合う』ことと『続けられる』こと
マウスピースは、単なる「道具」ではなく、「歯と体を守る“予防医療の一部”」です。
市販品と歯科医院製、それぞれにメリット・デメリットがありますが、最も重要なのは以下の2点です。
- 自分の口に“合っている”かどうか
- 安全に“続けて使える”かどうか
特にスポーツを真剣に続けるお子さまや、ケガのリスクを減らしたい競技者の方には、専門家によるフィッティングと定期的なチェックが不可欠です。
「マウスピース、どれがいいかわからない」「今のもので本当に安全か心配」
そんなお悩みがある方は、ぜひ一度当院にご相談ください。最適なマウスピースをご提案いたします。